涼宮ハルヒのSS:9-143-1

涼宮ハルヒのSS:9-143-1

143 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:13:50 itrNwePw

例の彼と同じクラスになった。もちろん、涼宮さんも同じクラス。

情報統合思念体は、彼をイレギュラー因子って定義してたけど、ごく普通な感じ。

ただの男子高校生。何かの間違いじゃないかと思ったくらい。

涼宮さんと仲がいいようにも見えない。と言うか、涼宮さんが傍若無人すぎるのよね。

あの調子で、あの二人に接点なんてできるのかな。

彼が涼宮さんに何か話しかけても、まったく相手にしてないようだし。

でも、まあいい。観察を継続しよう。

涼宮さんの印象は、奇矯な行動と、あの性格を除けば、非の打ち所がないって感じ。

ただ、あの性格は、こちらにとって都合がいいかも知れない。

あれじゃ誰も近付けないだろうし。

わたしが話しかけても、いつも邪険な態度。

宇宙人に会いたかったんじゃないの? と思わず口走りそうになる。でもそこは我慢。

クラス委員長になったのが、よくなかったのかな。

でも、涼宮さんは、男女問わず、誰にでも邪険な態度をとるから関係ないんだろうな。

例の彼は、特に何もなし。本当にただの男子高校生。

不良でもないし、優等生ってわけでもない。スポーツができるわけでもなさそう。

ただ、誰と話すときも自然な感じ。その点は結構、好感かも。

彼がわたしに興味を持ってくれると嬉しいんだけど、そんな気配もない。

結構、わたしって魅力的に設定されていると思うんだけどなぁ。

そんな感じで四月を過ごし、せっかく三年続いた退屈な待機モードから抜けたって言うのに、

何も起こることもなく、五月になった。

連休明けのある日、朝のホームルーム前、突然、教室に涼宮さんの声が響いた。

「そっちのほうが面白いじゃないの!」

振り向くと、あの彼が、涼宮さんと何か話をしているらしかった。

どうやら、彼と彼女の間に何か接点が生まれつつあるらしい。彼が涼宮さんに何か言っている。

「だからよ! だからあたしはこうして一生懸命」

涼宮さんが、イスを倒して立ち上がり、続けて何か言いかけたとき、岡部先生が入ってきた。

一瞬、空気が止まり、またすぐ、動き始める。

涼宮さんは、無言でそのまま席に着き、ホームルームが始まった。

彼女があんな物言をするのは初めてだ。

彼は、何か、涼宮さんの琴線に触れるようなことを言ったに違いない。

それはなんだろう。知りたい。


144 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:14:32 itrNwePw

休み時間、谷口くんが彼に、驚天動地だ、とか言っていた。

涼宮さんが誰かと話しているということは、彼女と同じ中学だった谷口くんにも、

意外なことだったらしい。なるほど。

わたしも彼に訊いてみることにした。

どうしたら涼宮さんが話すようになるのか、そう訊ねてみる。

彼は、イスに座ったままでこちらを見上げ、困ったような表情で、

「解らん」

とだけ言った。本当に心当たりはないらしい。そうだろうなぁ。仕方ないか。

「ふーん、でも安心した。涼宮さん、何時までもクラスで孤立したままじゃ困るもんね」

一人でも友達ができたことは、いいことよね、と続けて、今後、涼宮さんへ伝えるような

ことがあれば、彼を通して伝えてもらうようにお願いするから、と、そう伝えた。

彼は不満そうな顔をしていたが、両手を合わせて、

「おねがい」

と、少し甘えた感じで言ったら、渋々ながら頷いた。

わたしは、クラスの委員長だし、このような発言も不自然じゃないと思う。

彼には、わたしの印象をよくしておきたい。わたしを意識して欲しいから。

彼と仲良くなれれば、彼や涼宮さんに関する正確な情報を得られそうだし、

そもそも、それが、わたしの役割の一つなんだから。

谷口くんが変な顔をしてたけど、大丈夫だろう。妙な印象は与えていないはず。

ま、谷口くんや国木田くんが、どう思おうと関係ないんだけどね。

そう思いながら、わたしは、クラスメイトの輪に戻った。

涼宮さんが、彼と何やら画策しているらしい。

そう気が付いたのは、英語の授業中に、彼女が何かを叫んだときだった。

大きな音がして振り向くと、彼が後頭部に手をあて、涼宮さんに文句を言っていた。

「何しやがる!」

涼宮さんは、その言葉を無視すると、

「気が付いた!」

と叫んだ。何に気が付いたのかと思ってたら、どうも部活の件で何か思いついたらしい。

彼女の輝くような笑顔。初めて見たような気がする。

涼宮さんは、彼も、驚いている生徒も先生も、その場の空気も、全てを無視して、

そのまま席に着くと、何かを考えていた。しばらくそのまま突っ立っていた彼は、

やがて先生に向かうと両手を広げて肩を竦め、教室は、いつもの雰囲気へと戻っていった。

部活? 一体何をするつもりなんだろう。

気になって、わたしも以降の授業は、あまり聞いていなかった。

わたしの知らないところで、何かが進捗している感じ。これは問題ね。

涼宮さんの笑顔と彼への言葉。あれは、彼と一緒に何かを始めようとしているのだと思う。

それは、彼女が彼を完全に気に入ったということなのだろう。

彼を、友人、いや、同じ仲間だと思えるほどに。

ついに、涼宮さんと彼の間に接点が生まれたのだ。

想定外の話ではない。と言うより、そう想定していたのだから、問題はない。

しかし、一体、彼のどこが気に入ったのかが解らない。

彼は、とても涼宮さんが興味を持つ対象とは思えなかった。

その後、休み時間になると涼宮さんは彼を連れてどこかに行ってしまった。

彼に涼宮さんが何をしようとしているのか訊こうと思ったけど、やめておく。

あまり頻繁に、涼宮さんのこと聞くのも、妙な印象を与えるかも知れない。

おせっかいな奴だと思われるのは、避けたかった。

そのうち解るだろう、そう思うことにした。腹立たしいけど。


145 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:15:22 itrNwePw

それから何日か経った放課後、校門で、二人のバニーガールを見かけた。

よく見ると涼宮さんだ。それともう一人。たしか、朝比奈みくる

別の時間平面から来た上級生。言ってみれば、未来人。

何をしているのかと思って近付くと、ビラを渡された。

SOS団結団に伴う所信表明、そう書いてある。SOS団?

涼宮さんは、彼だけじゃなく朝比奈さんを含む何人かで、同好会のようなものを立ち上げたようだ。

ビラには、不思議なことを募集しているとか、書いてある。

状況が理解できず、何となくそのまま彼女らを見ていると、ばたばたと、先生方がやってきて、

二人を連れて行った。

あれは、生徒指導室行きだろうなぁ、気の毒に。一体何をしてるんだろう。

彼女の行動の意味が解らない。

涼宮さんの周りで、何かが始まったことだけは確かだ。しかし、それが解らない。

仕方がない。このままでは、状況が把握できないままだし、長門さんに訊くことにしよう。

そう考えて、その日の夜、長門さんの家を訪ねた。

今日のことを話し、知っていることを訊くために。

長門さんとは、情報リンクを介することで、観念的な情報交換が可能だ。

わたしは、緊急時や会話に齟齬が発生しないかぎり、言語を使用する方が好きなんだけど、

長門さんは、会話が苦手なので、彼女と情報交換する際には、情報リンクを確立する。

情報リンクによる情報伝達には、自覚的な虚偽情報を含めることができないから、

妙な情報を、連想付帯情報として一緒に送出してしまわないように注意しなければならない。

その点が、面倒だ。

いつものように制服姿の長門さんは、表情を固定したままで、

涼宮さんが、文芸部の部室を拠点として、生徒会非公認の、

不思議なことを探す同好会のような団体を立ち上げたと伝えてきた。

それには、長門さんも含まれている。

軽い驚きを感じていると、彼女が少し時間を置いて、再び伝えてきた。

――涼宮ハルヒとイレギュラー因子の動向を観察する良い機会。

長門さんは観察が役割なはず。観察する側が対象に干渉する場に紛れ込むなんて問題ないのかな。

――大丈夫。

そう答えて、一瞬、視線を和室の襖に向け、わたしの顔を正面から見据えて、続けた。

――イレギュラー因子には、全てを話す。

驚いた。

全てって、わたしたちの存在理由や情報統合思念体の目的を?

彼女は肯定し、わたしの疑問に、あなたのことは話さない。許可は得ている。と、そう伝えてきた。

長門さんは、彼に、本当のことを打ち明けるつもりらしい。

そのことに情報統合思念体も許可を与えたらしい。

ということは、長門さんの文芸部入部と涼宮さんの同好会は、シナリオ通りってことなのね。

なるほど。そうならそうと教えてくれればよかったのに。

――派閥が違う。あなたが同意しない可能性が高い。

それはそうね。わたしは、今でも反対だわ。あなたが涼宮さんや彼と接触するなんて。

それに、彼に、インタフェイスであることを知らせるなんて。

そう思いながら、そのシナリオに沿って長門さんが動いているなら、

その邪魔はできないのだということも、理解していた。


146 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:16:21 itrNwePw

わたしは、ため息を付き、何気なく和室の襖に目を向けた。

そう言えば、彼女は、いつもこの部屋を気にしている。

――その疑問に答えることはできない。それ以上の質問や詮索は無意味。

そう伝えてくると、彼女は、情報リンクを切断した。

なぜ、今、情報リンクを切断したのだろう、そう疑問に思いながらも、わたしは口を開いた。

まだ、伝えたいことがある。

「彼への接近は、うまく行きそうにないの。わたしには、あまり興味がないみたい」

「…………」

「涼宮さんと彼の間に接点ができた以上、彼への接触は必須事項だと思う」

「…………」

「だから次は、ちょっとした事故を装って、彼の情欲を煽るような接触を試みようと思うんだけど」

「不要」

否定された。それも、強く否定されたような気がする。

「でも、彼と特別な関係を築ければ、涼宮さんの制御が可能になるかも知れない」

「予測不能。不確定要因が多い」

「試してみる価値はあると思う。それにわたしも彼に興味があるし。協力して欲しいの」

そう言ったとき、長門さんの視線が揺れた気がした。

少しの沈黙の後、彼女が口を開いた。

「それが、あなたの派の意向なのであれば、否定すべきではなかった。すまない」

そして、しばらく黙り込んだ後、言葉を続ける。

「しかし、あなたの彼に対する行動を検出した場合、わたしはその行動を阻止する」

彼女の視線は眼鏡越しでも強く、わたしは睨まれていると感じた。

なぜ、何の能力も持っていない、ただの人間にそこまで拘るのだろう。

情報操作でも記憶改変でも実施して、彼をこちらの都合の良いように行動させたほうが

色々と手っ取り早いと思うのだけど。

確かに今は、彼に対する情報操作や記憶改変は許可されていない。

でも、だからと言って、色情的なアプローチまで禁止されているわけではない。

長門さんは、わたしの話にどこか苛ついている感じ。はっきりとは解らないけど。

どうも、長門さんは、涼宮さんだけじゃなく、彼にも興味を持っているようだ。

何となく、観察対象に対する興味とは違うような気がする。

でも、明確には感じられない。

黙ったまま動かない長門さんの様子は、この話は、ここで終わりだと言っているようだった。

でも、彼に対する色情的アプローチに難色を示すとは思わなかったな。

「ふーん、何か気に入らないなぁ。でも、わたしは、いつでも長門さんの味方。

派閥はあまり関係ないの。何でも長門さんに話しているのよ。

だから、わたしには何でも話して欲しいの」

そう言いながら、わたしは、立ち上がり、長門さんの横に座りなおした。

長門さんの身体が少しだけ強張る。かわいい、そう思いながら長門さんの肩をそっと抱く。

「イレギュラー因子の彼に、わたしたちのことを話しても、きっと信じてもらえないわ」

彼は、ここの常識に囚われているもの、そう考えながら、彼女を軽く抱きしめる。

彼女が無表情な目を、わたしに向けた。眼鏡の奥で睫が少し震えているように見えた。

彼女の耳元に口を近付け、息がかかるように、

「彼に変な人って思われたら、長門さん、傷つくんじゃないかしら」

そう呟き、片腕で彼女の肩を抱いたまま、もう片方の手を彼女の胸に当てる。

ぴくっと彼女の身体が反応する。彼女の胸は大きく無いけど、敏感そう。


147 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:17:12 itrNwePw

制服の下から手を差し入れたい気持ちを抑えて、

「わたしは、長門さんが傷つくのを見たくないの」

そう言いながら、わたしを見ている彼女の唇に、自分の唇を近づける。

「だから、その前に、彼を篭絡しちゃえば……」

そして、軽く唇を重ねる。

そのまま押し倒そうとしたとき、長門さんが、わたしの腕を払いのけ、立ち上がった。

そして、わたしを見下ろす。

「やっぱり、だめかな」

「…………」

彼女は黙ったまま。

身体の中心にじんわりと熱を感じる。

長門さんに迫ったのは、わたしの考えを知ってもらうための思いつきだったんだけど、

あのまま続けたときのことを想像して、わたしは、少し興奮していた。

情報操作で、彼女の身体動作を固定できないか、そう考えて、首を振る。

現状では、わたしの情報操作は、実行した瞬間、長門さんに無効化されるだろう。

それをするには、遅延コードを含めたプログラムを用意しておく必要がある。

それでも、それほど時間をかけずに、長門さんはプログラムを無効化するだろうけど。

わたしは一つため息をつき、立ち上がって言った。

「ごめんなさい。今日はもう部屋に戻るわ」

そして、彼女の部屋を出た。彼女は最後まで何も言わなかった。

今まで、彼女に何かして、明確に拒否されたことはなかった。迫ったことはなかったけど。

でも、今回は、明確に拒否された。

次の日、休み時間に教室で谷口くんと国木田くんが、彼と何か話していた。

昨日のバニーガールの件だろう、そう思い、彼に近付いた。

彼は、苦りきった顔で床に視線を落としていた。朝比奈さんは学校を休んだらしい。

そりゃ、あんな格好させられて、生徒指導室で注意を受けたら、休みたくもなる。

少しだけ同情。でも、彼女も涼宮さんに接触しているくらいだから、それなりの覚悟はしているはず。

ただ、長門さんにだけは、あんなことさせたくない。そんな状況だけは阻止しなければ。

その日は特に何事もなく、あまり遅くならない時間に帰宅した。

状況が進展しない。わたしは、徐々に焦燥を感じ始めていた。

例の彼への接触は、ほとんど進展していない。

涼宮さんとも接触できていない。と言うか、涼宮さんとは、まともな会話すらできていない。

どちらも、長門さんが接触しているので、大きな問題ではない。

でも、そもそも、対象に接触するのは、長門さんの役割ではなかったはず。

与えられた役割を果たせないのは、わたしの存在意義に関わる。

なんとかしないといけない。でも、どうしたらいいのだろう。何も考え付かない。

ため息をついて、部屋着のまま、ベッドに寝転ぶ。

何となく、昨日、長門さんに迫ったときのことを思い出した。

長門さんの胸や唇、やわらかかった。そう思うと、何かたまらない感じになる。


148 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:17:58 itrNwePw

わたしは、長門さんが好き。

彼女を守りたい。彼女を抱きしめ、一緒に喜びを感じたい。

わたしと長門さんは、互いに正体を知っている、唯一のインタフェイス。

他に配置されたインタフェイスのことは知らされてないけど、わたしたちは互いを知っている。

わたしは、もっと長門さんのことを知りたい。そして、わたしのことも知って欲しい。

そして、長門さんに信頼される存在になりたいと思っている。

この世界で、わたしが知る、わたしの仲間は長門さんだけなのだから。

そして、彼女と深く強く触れ合いたい。彼女を抱きしめたい。愛し、そして愛されたい。

彼女の乱れた姿を思い浮かべ、わたしは、自分の胸に触れ、太腿の間に手を伸ばす。

そこは薄らと湿り気を帯びている。枕に顔を埋めて、彼女の痴態を想像する。

彼女が乱れるなんてことはあるのだろうか。いつも冷静な彼女。

無表情な白い顔。眼鏡の奥の冷静な瞳。その顔が快感で歪み、細い身体を震わせる。

微かな喘ぎ声。潤む瞳。湿る下着。濡れ広がる秘裂。

乱れさせたい。その感覚を知って欲しい。知らせたい。

掌全体で胸を揉みながら、指先を胸の突起にあて、転がすように弄り、押しつぶす。

下着を脱ぎ、指を差し入れ、秘裂にそって上下に擦る。

既に湿っていたそこは、指先を飲み込み、濡れた襞が指先に絡む。

うつぶせのまま軽く膝を立て、粘膜を指先で刺激する。そこが広がり、そして捻れる。

頭が痺れ、何も考えられなくなる。小さく喘ぎ声が漏れる。息苦しい。

髪が乱れて広がる。勝手に身体が揺れ、胸の突起がシーツで擦れる。

両足を大きく広げ、両手で、濡れそぼったそこを弄る。

陰唇が引っ張られ、秘芯の突起が露出する。淫液が掌にまで垂れてくる。

シーツが汚れてしまう、そうぼんやりと思う。

濡れた指先で秘芯に触れ、擦り上げる。思わず、叫び声を上げそうになり、唇を噛む。

何かがこみ上げてくる。彼女の姿を思い、彼女の名前を呼ぶ。

その瞬間、わたしの背が反り返り、短く痙攣した。

息が整うまで、しばらく時間が必要だった。

この世界では、同性同士でのそのような行為は、倫理的に推奨されていない。

でも、わたしたちは人ではない。そう、人とは違う価値観や倫理観を持っている。

だから、彼女と、そのような行為に及んでも、何も問題はない。

そう何も問題はないのだ。

そう考え、ぼんやりした頭で、ある情報状態を制御する因子をプログラムした。気紛れに。

しばらくして、心地よい脱力状態のまま寝返りを打ち、思考を、涼宮さんへ向ける。

情報統合思念体の一部に気になる考えがあった。制限されているはずの方法。

それは、思念体を代表する意思とは思えない。でも思念体は統一的な見解を持ってはいないのだ。

だから、それについて考えることはできる。

わたしは、考え始めた。


149 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:18:40 itrNwePw

翌日、教室で涼宮さんが彼に謎の転校生がどうのとか興奮気味に話しているのを聞いた。

転校生? そういえば、九組に転校生が来るって職員室で誰かが話していたような。

涼宮さんが興味を持つ転校生。謎の転校生ね。彼女の自己紹介を思い出しながら考える。

宇宙人と未来人は既にいる。ということは、異世界人か超能力者かな。

その夜、転校生のことを確認するために長門さんの家に向かった。

長門さんは、情報収集能力が大幅に強化されているので、対象が多少遠隔に存在していても

正確な状況把握ができる。きっと、例の転校生の素性も知っているだろう。

わたしは、長門さんより汎用的に設定されているので、情報収集能力は長門さんほどではない。

ただ、基本的な情報操作能力は同じなはずだ。

わたしは、長門さんのバックアップも兼ねているのだから。

長門さんは、ここ何日か夕方にどこかへ出かけているようだったが、今日は在宅していた。

わたしを部屋に迎えた後、長門さんは、テーブルに向かい、制服のままで正座した。

いつもと違う雰囲気。制服のままなのは、いつもと同じなのに。

何かあったのかな。

情報リンクの確立要求が拒否される。どうしたのだろう。

知られたくない情報があって、その扱いを制御できないのだろうか。

そうなら、それは珍しいことだ。

何があったのか口頭で聞くと、彼女は、ぽつりと言った。

「ない」

それにしては様子がおかしい。でも、機能不全などではないようだ。

長門さんが問題ないと言っているのに、心配していても仕方がないので、

とりあえず、例の転校生について訊いた。

涼宮ハルヒの情報干渉空間に介入できる能力者」

涼宮さんに文芸部に連れてこられ、そのまま彼女の同好会に入ったらしい。

例の機関のメンバーということ? そう訊ねると、小さく頷いた。

なるほど、いわゆる超能力者ってやつね。

じゃ、当初の想定とは若干違うけど、涼宮さんは自分の望む環境を整えたってことね。

長門さんは黙ってテーブルに視線を当てたまま、動かない。


150 名前:名無しさん@ピンキー 本日のレス 投稿日:2006/05/29(月) 18:19:33 itrNwePw

やはり何か変だ。長門さんの様子がいつもと微妙に違う。そう思いながら話を続けた。

「そういえば彼も涼宮さんに巻き込まれているみたいね。何か苛ついていたみたい」

長門さんが反応した。ゆっくり顔を上げる。

転校生の話には反応が薄かったのに、彼の話には反応するのね。

そう思いながら、話を続けた。

彼は危険だと思う。涼宮さんは、とても彼を気に入っているみたいだけど、

彼は、その状態を良しとしていないようだ。

そのうち、彼は、彼女に想定以上の精神的ダメージを、無自覚に与える可能性がある。

それは危険だと思う。

「その可能性は検討済み。だから、彼には、全てを知らせた」

「そうだったわね。で、どうなったの?」

わたしは、長門さんの試みは、うまく行かないだろうと踏んでいた。

「…………」

彼女は答えないが、やはり、あまりうまくは行かなかったようだ。

彼は、彼の信じる常識に凝り固まっているのよ。

だから、素直に全てを話しても、信じてくれなかったでしょ。

「確定したわけではない」

そう言った彼女は、明らかに寂しそうに見えた。

「そうね」

そう言って、わたしは、自分の予測が正しかったと思った。

長門さんは、彼に本当のことを教え、彼はそれを信じなかった。

その事実に、彼女はひどく落ち込んでいるようだ。

なぜ、彼女が落ち込むのかが、よく理解できないけど。

人間に何かを期待するなんて、どうかしている。

ただ、長門さんが悲しんでいるようなのは、確かで、その原因となった彼には、憤りを感じる。

でも、それは、彼をわたしたちと同じように扱おうとした、長門さんの考え違いが発端だ。

長門さんを慰めたい、そう思って、これは、チャンスだと気が付いた。

そう、彼女を慰めよう。そして、結局、この世界では、わたしたちだけが

仲間であり、よって、信頼関係を結べるのだと思い出して貰おう。

人間に何かを期待しても、裏切られるだけなのだから。

たとえ彼女がわたしを拒否しようとしても、今なら反応は遅れるに違いない。

そして、わたしを知ってしまえば、状況を正しく理解してくれるはずだ。

わたしは、静かに顔を伏せると、情報操作を開始した。長門さんにとっては不意打ちだろう。

昨日、気紛れで用意したプログラムを実行し、複数の受動的遅延コードを有効にする。

これで、長門さんが情報操作を行っても、即時性を失うはず。

この部屋は長門さんの部屋。彼女の空間。だから十分に注意しなければならない。




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